EU憲法批准

フランスでは欧州共通通貨EURO導入に続きヨーロッパ統合の目玉の第2弾とも言えるEU憲法(欧州憲法)批准に関してほぼ毎日報道されています。国際条約の一つに見えるこの憲法批准はどのようなものでしょうか。

EUと言うとEC(ヨーロッパ共同体)の後継と思っていましたが、実はECとEUは別々に存在しているようで、今回のEU憲法では、1本化し法人格を与えることが法的裏付けとなっています。ECというのはヨーロッパで2度と戦争を起こさない為に、紛争の原因で手段である石炭や鉄鋼など基本資源を国家を超え共同管理することから始まりました。

EUは外交・安全保障・防衛・警察・司法・移民・難民という非経済分野での結束と協力を強化し政治同盟として発展し設立時加盟国は西欧の6カ国から現在は中・東欧も含め25カ国4億5千万の規模に拡大しました。

さて、このEU憲法国民投票が行われるほど重要な問題なのかと言うことです。一般的に国際条約を締結するのに、かなり重要な意味を持つ条約でさえ国民投票まで行いません。ユーロ導入の際も国民投票が行われましたが、これらは国家の持っている権利を失うことになるからです。つまり通貨は国家が発行しますから、通貨発行量など経済政策など国家政策になります。各国の中央銀行が金融政策を直接に策定・実施することはなくなります。

EU憲法は、EU基本憲章とは違い法的拘束力のあるものになっています。国家の保有する立法権が一部制限されるとも言えます。各国の憲法や法律などと矛盾する場合は、これを改正しなければなりません。憲法学者は現在のフランス共和国憲法がEU憲法上で改正することなく批准可能としていますが、各国様々な懸念があります。

例えば、イギリスではEUの労働者時間制限に対し、より多く働いて収入を得たいと考えていますが、この例外が認められなくなります。フランスでも、宗教や少数言語などの政策に対しEUとは違いがあります。

フランスの誇る公共サービスに関してEU憲法ではあまり重きを置いていないようで、一般利益経済サービスという言葉で置き換えられており、郵便、エネルギー(電気・ガスなど)、輸送、電気通信など、公共企業や民間企業が行う有料サービスの資金調達の方法のみを定義しています。保険、衛生、教育、社会保障といった分野では国家の特権が保護されています。

一般利益経済サービスでは、公共援助は社会のために使うことが出来るが、産業保護のためには出来ません。例えば鉄道路線で採算が取れなくともその社会のために必要な路線に対し補助を行うことは出来ますが、貨物輸送など他の競争がゆがめられる可能性のある補助は出来ません。

ポーランド、スペイン、イタリアは宗教に関してより触れて欲しく、フランス、ベルギーではそれに反対でした。「全ての人は自らの宗教、信条を公私の場で表現する権利を持つ」「教会屋組織の開かれた定期的な対話を維持する」と定めていますが、フランスは政教分離の考えで学校などで宗教的な印を禁じています。これに抵触する可能性があります。