お先にどうぞ

2003年/110分/カラー
監督:ピエール・サルヴァドーリ
脚本:ブノワ・グラファン、ピエール・サルヴァドーリ、ダニエル・デュブロー
6月17日(木)16:00

名前、ベルナール・フレデリック。職業、クロード・フランソワ。70年代屈指の人気歌手。そう、彼の職業はスターに成り代わることなのだ。ベルナールの野心、それはゴールデンタイムに全国放送されるそっくりさんコンテストで優勝することだった。しかし、妻のヴェロは迷惑そうだ。栄光への渇望と妻への愛との間で板ばさみになり、身動きの取れなくなったベルナールは、ひとつの選択に迫られていた…。

クロード・フロンソワとは…。62年から「Belles,Belles,Belles」「Marche tout droit」「Pauvre petite fille riche」などのヒットを連発。日本ではフランス・ギャルの「夢見るシャンソン人形」とカップリングされた「ドナ・ドナ」が大ヒット。しかし70年代から坂道を下り始め、コンサート中に発作に襲われ、ついで自動車事故を起こす。さらに脱税容疑。78年、浴槽の中で感電死する。死後、彼の楽曲は多数のリミックス音源として使われている。

「スターへの夢を追うのに年齢は関係あるか?」と聞かれたら、希望も含めて「関係ない」とたいていの人々は答える。しかし、中年になったおじさんがモノマネを復活させたら、たいていの妻は嫌がるだろう。ベルナールもご多分にもれず、妻の猛反対を受けながら、そっくりさんコンテストに挑んだ。このそっくりさん・・・クロード・フロンソワへの熱意は相当のもので、自宅(といっても、マンションのオープンルームで住んでいる)の地下一階に専用の衣裳部屋もあり、ダンスの練習には余念がない。その打ち込む情熱を見ていると可笑しくもあり、そこまでスターな自分を渇望する姿は、呆れるのも通り越して感動してしまうのだった。展開自体には多少無理も見えるが、内側からエネルギーが勢いよく噴火するように進んでいくので、観ていると元気になる。最近ちょっと疲れたな、現状に流されてるな、という方はベルナールのエネルギーを頂いてもいいかもしれない。