ワイルド・サイド

2004年/107分/カラー
監督:セバスチャン・リフシッツ
脚本:ステファン・ブーケ、セバスチャン・リフシッツ
出演:ステファニー・ミシュリニ、ヤスミン・ベルマディ、エドゥワール・ニキティヌ

社会から疎外された3人の若者がパリで出逢う。一人はロシアからの不法移民。一人はトランスセクシャルの街娼。もう一人はマグレブ人(旧フランス植民地からの移民の総称)。孤独な感情を抱えた3人は自然に惹かれあい、やがてそれぞれの腕の中に慰めを見出していく。アンダーグラウンドな生活と、身近な人の死という出来事を経て、3人の絆は一層深まっていく…。

本作は2004年のベルリン映画祭のパノラマ部門に出品され、最も素晴らしいゲイフィルムに贈られるテディベア賞を受賞した。ゲイフィルムというカテゴリーを越え、人間の魂を繊細に描写して、マスコミにも絶賛され「新しい才能の誕生」と大きな注目を浴びた作品だ。

くびれた腰、赤いマニュキュア、白くて細い体、大きな胸…最後に男性の陰部、というトランスセクシャルの街娼の裸体を、冒頭から見せて観客を驚かせた。その後も街娼が買われているシーン、少年がトイレで体を売るシーンと続き、世間で隠されているような暗部が次々と現れてくる。そして、「死んだお父さんは今のあなたに逢わなくて良かった」という母親の台詞、「愛してるならどうして「やめろ」と言ってくれないの」という自身の台詞など、登場人物たちがそう生きるしかなかった哀しみが端々から伝わってくる。負の感情を持つ者同士は共鳴する。同じように疎外されざるを得なかった3人が惹かれあっていくのも、たった一つ拠り所が欲しいから。

彼ら3人は双方共に愛し合っており、三角関係というわけではない。一人対二人の関係ではなく、3人が一組になってまるで共同体のようだ。壊れそうな者たちがやっと身を寄せ合う関係は、普段目にする恋愛関係とは違っており、少し奇妙な印象も与えるかもしれない。けれど、そのような感情や世界がこの世に存在しているという事実を観客に知らせること。観客側も、受け入れられるかどうかは別にして、そのような存在も認められること。このフィルムがそんなキッカケになり、今までと違った関係を打ち出すのかもしれない。