父と息子たち

2002年/97分/カラー
監督:ミシェル・ブージュナ
脚本:エドモン・バンシモン、ミシェル・ブージュナ
出演:フィリップ・ノワレパスカル・エルベ、シャルル・ベルリング、ブリュノ・プズル

レオは一家の年老いた父。彼は今や気持ちがバラバラになってしまった息子3人の愛情を取り戻すためなら、何でもしたい気になっている。ある日彼はちょっとした病で倒れた。それをいいことに、心配する息子たちに重大な手術が必要なんだと嘘をつき、その前に皆で旅行に行きたいと願う。さすがの息子たちも同行を断れなかった。かくして父と息子たちはカナダに旅に出るが…。

『赤ちゃんに乾杯!』などで知られるベテラン俳優ミシェル・ブージュナの初監督作品。彼はこの不協和音を奏でるカルテット(4人の家族)の見事な指揮者となっている。はじめはバラバラでどうなる事かと思った家族が、ぴりりと効いたユーモアと、温かい眼差しという魔法の指揮を持ってして、見事なハーモニーに変えられていく。家族は時にすれ違うことがあっても、お互いが向かい合って時間を過ごすことで、いつだってまた愛し合うことができるのだと気がつかせてくれる作品である。

父親レオの、垂れた目、丸い鼻という外見もさながら、息子達への奮闘ぶりがあまりにも可愛い。「クジラを見にカナダに行く?シーズンオフだよ。」という言葉には、「絶対いるのー!」と無理に押し通す。薬をこっそりチョコレートに変えて、息子達の前でいかにもなフリをして飲む。療法士の所に連れて行かれたら、大樹に巻きついたり、気を受けたり、怪しい治療もなんのその。時に子供のように駄々をこねたり、時に仙人のように悟ってみたり、レオの魅力だけで惹きつけられるものは充分。その上、個性の違う息子3人の織り成す兄弟喧嘩や助け合いは、身近に感じられて頷けるものばかり。「おまえはいっつもスープを音を立てる。こうだ、こう。」「えっ、こう?」「そう、いいね。」なんて、彼らが確実に家族だと認識させ、言葉に出さない温かさが伝わってくるのだ。フランスで100万人も動員させたというのも頷ける、必見のヒューマンコメディだ。