いつか会える

2004年/95分/モノクロ
監督・脚本:ブノワ・ジャコ
出演:イジルド・ル・ベスコ、ウアシーニ・アンバレク、ロランス・コルディエ、ニコラ・デュヴォシェル

19歳の少女が恋に落ちた相手は、とんでもないならず者。ある日彼は銀行強盗を働き、殺人まで犯してしまう。行く当てのない彼をかくまった彼女は、翌日ある選択をする。彼と共に逃亡する、と!それは、堅苦しい父親とのアパルトマン生活、淡々とした毎日…という今までの自分の人生からの逃亡でもあった。かくして彼女は、自分が望んでいた人生へと突き進み始めるが…。

平凡で決まりきった毎日から抜け出したい、という逃避願望はあれど、実行に移せる者はそういない。しかし主人公は銀行強盗をした彼との逃亡というキッカケで、飛び出してしまった。愛する人と朝から晩まで共にし、盗んだお金で豪遊する生活は、まるで最高のバカンス。お金をストッキングの中に隠したり、税関を何気なく通り過ぎることさえも、美味しいスパイスになる。嬉しそうに「不良少女だから」と自ら語ってしまうあたり、状況に酔っていて、事の重大さどわかっていない。その姿は奔放すぎて、少し浅はかなようにも見える。けれども、19歳の頃、誰とも違う特別な生き方を望んでしまう気持ちは、誰しも思い当たるフシがあり、それがある意味、不器用な純粋さでもあった気がする。

しかし、彼女は行き過ぎた。果てしなく続くバカンスは存在しなかった。お金も尽きた頃、苛立ちが広がり、それが彼女を現実と向き合わすことになる。そして、最後には彼らとはぐれてしまう。愛する彼を失った喪失の表情からは「浅はか、だけれど純粋な想い」を真っ直ぐに捧げていた事実を知らせ、観ている者をせつなくさせる。

モノクロの映像が、彼女が時折描くデッサンの線を美しく際立たせ、感情の光と影をきめ細かく表現する。その繊細で触れると壊れそうなシーンの美しさは、若さという一瞬のきらめきにも似ているものがある。